1年数ヵ月を駆け足で
 4月も早半ば。きちんとここに書いたのは2013年1月末のことだから、実に1年余りが経ったことになる。その間、「人の引力」に恵まれなかったかといえば、そんなこともなく、各地で邂逅や、新たな出会いを繰り返してはいた。活動はそれなりにしていたのである。
 昨年を振り返って特筆すべきはなんといっても、九州での活動だった。毎月のように7県のどこかを歩いていた。漁業関係の取材、サッカーの取材もあったけれど、後半は「ななつ星 in 九州」関連での滞在が大半だった。当然、愛してやまない博多「安吉」への訪問も重なった。
 その半年足らずの九州との行き来の中で40名ほどの方から話を頂戴した。掘り出そうと試みたのは、「ななつ星」誕生の物語である。JR九州の唐池恒二社長とデザイナーの水戸岡鋭治さんが魂をぶつけ合い、生み落とした豪華寝台列車。2人の狂気に触発され、多くの技術者や職人たちが動かされた。限られた時間と新たな技術を模索する中で生み出された至高の車両といってもいい。その製作過程を私は、直接現場で見て、聞いて、物語としてまとめさせていただいた。
 それがこの半年間で一番の仕事だった。
 それ以外にも、晩夏には、小泉今日子さんのロングインタビューをさせてもらったり(ものすごい反響だった)、建築家・伊東豊雄さんの長いルポを書かせていただいたり、大好きな鴨川の漁労長のもとを訪ねたり、バンコクで開催された水戸岡鋭治さんの展覧会に行ったり、と他のこともやってはいた。7月には『アンデルセン物語』(新潮社)も書き下ろし、広島でのトークショーもあった(アンデルセンの高木彬子相談役と、これまた水戸岡鋭治さんとの鼎談)。今年の2月になって、『たったひとりのワールドカップ』が15年ぶりに増刷されるという珍事?、宮本輝さんの文庫解説を任される僥倖にも恵まれた。改めて振り返ってみると、充実した1年余りではあったのだ。
 ……しかし、久しぶりにこうやって大雑把に振り返ってみると、なんだかあまり面白味がない報告になっている、という気もしてきた。そもそもこうしたブログのようなものはやはり細部が重要なのだ。行きずりに起きたこと、電車内で見たもの、今朝、政治家の顔を見て考えたことなどを思いのまま記すことでこそ佳き発露となるのだろう。でないと、単なる行動記録、さらに言えばつまらぬ自慢話という類で終わってしまう(食に特化すると不思議とそうでもないけど)。そのためには、インターバルをとらないことが肝要なのかもしれない。が、いまや私にとって、こうした習慣はなかなかの重荷である。やろうとするなら少なくとも、1ヶ月に1回ぐらいは発信すべきなのかもしれない(ときどきやっていた「某月某日」のように)。毎日本欄を訪ねてきてくれる人はいるわけだし。いっそ「食」だけにしますか。しばし考えます。
        ★★★★★★★
 さて、最新刊は、

『「ななつ星」物語 めぐり逢う旅と「豪華列車」誕生の秘話』

 というタイトルで小学館から4月21日に発売されます。1512円(税込み)。

 来週から少しの間、博多でキャンペーンみたいなことをやったり、日本橋三越でトークショーもやることになっております。新聞やラジオにも出るかもしれません。引き続きどうぞよろしくお願い致します。
2014-04-19 12:44 この記事だけ表示