11月雑記
×月×日
ANAで広島入り、すぐに2本のインタビュー。さまざまな事情で端っから少々難儀する。が、最初のハードルが高いと、あとは楽に感じるものである。夜、編集者A氏と飛び込みで「美奈古鮨」へ。地アジ、ヒラメ、しめ鯖、トリ貝などをいただく。とりわけ穴子が美味。家族経営のいいお店だった。その後、すっかり変貌してしまった「中ちゃん」を10数年ぶりぐらいで訪ねる。注文票の裏に亡くなった親父さんの顔が印刷してあった。
×月×日
関係者インタビューののち、市内「まめ福」で関係各位と食事会。
×月×日
芸北の「100年農場」で式典。神事が似合う清楚な建物。久しぶりにネクタイをしめる。夜、「感謝の会」という名の改まった晩餐。10年ぶりぐらいにオーパスワンを口にする。その後、水戸岡鋭治さん、Aさんと近くのバーへ。
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×月×日
2時間インタビューを2本こなしたあと、夕方の便で東京へ戻る。広島空港内で焼き牡蠣とビールで軽く打ち上げ。
×月×日
昨日と同じスーツケースに夏用を詰め込み、成田空港へ。機中で「鍵泥棒のメソッド」、「桐島、部活やめるってよ」を見る。ともによくできた映画。「鍵泥棒」には別段哲学のようなものはないのだけれど、圧倒的な展開力と役者の力で先へ先へと引っ張られた。「桐島」は、曖昧で不安定な「あの頃」をうまく捉えていた。深夜バンコク着。芸北との気温差、20度以上。そして、久々に嗅ぐアジアの匂い。
×月×日
ホテルで書評を書き、入稿。ホテルは快適(我が家より広い)。その後少し離れたバンコクのフットサルアリーナで日本代表対リビア戦を見る。ホテルから30分以上走って130バーツ(350円)。タイのタクシー料金は世界有数の安さらしい。4ー2で勝利。決勝トーナメント進出が決まる。夜、ホテル近くのタイ料理店「ルアン・タプティム」で食事。シンハービールにエビカツ。旨し。
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×月×日
昼間の時間が空いていたので、編集者T氏、カメラマンSさんと小型船でワットポーに出かける。どしゃ降り、渋滞に遭いながら、サイアム市場の屋台村みたいなところで、焼きそばを食べる。夜、和食屋に行くが、とんでもなくまずく(本年第1位)、アサヒビールで流し込む。その後、バッタ時計を売る店などを見て歩く。本物そっくりの時計、オメガもカルティエもすべて1500バーツ〜3000バーツほど。つまり1万円以下。シチズンのソーラー電波時計はなかった。
×月×日
夕方、日本代表の練習を見る。練習を終えたカズに日本から持ってきた『足に魂こめました』の文庫本を手渡す。夜、うなぎ中村」へ。先の「不可」和食店と違って、ここは「良」。駐在員多し。もちろん、その分、タイの飲食店としてはかなりお高いわけだが。
×月×日
朝6時、ホテル1階に集合。編集者、カメラマン、コーディネーター、通訳らとワゴン車でバンコクから350キロ離れたチャイヤプーム県に向かう。今回のバンコク取材のもうひとつの大きな目的であるウィラポン・ナコンルアンプロモーション(リング名)のインタビュー。田舎道を延々と走り、途中、道路沿いの食堂で早いランチをとる。
ウィラポンは、元世界バンタム級のボクサーで、辰吉丈一郎を破ってチャンピオンになったことで、一躍日本でも有名になった。その後、西岡利晃と4度、長谷川穂積と2度戦って、2年前に引退した。タイの英雄で、国民栄誉賞ももらっている。いまは、親族とレストラン「バンチャームロー」を経営していて、そこでインタビューできることになったのだ。
いざ、インタビューが始まると、通訳に難があることがすぐに露呈する。こっちの思いも伝わらないし、彼の言葉もうまく拾えない。もともと彼女は通訳を専門とする人ではなく、無理も言えず、最初の10分ぐらいでやり方を変えることにする。とにかく、聞くだけ聞いて、あとで、訳すというやり方である。実は同じようなことを私はかつて経験したがあった。イスラエルのエルサレムで予定していた通訳にドタキャンされ、自分でやらなければならなくなったのだ。前夜、必死で10問ほどの質問を英文でつくり、それを片っ端からぶつけていった。当然、深いやりとりにはならないわけだが、意外にも追加質問をその場でしたりしながら、8割方は必要な言葉は拾えた。今回はそこまでひどいレベルになるわけでもなく、結局、2時間半のインタビューはウィラポンの勘のよさと優しさのお陰もあって、つつがなく終わったのである。コーディネーターも通訳も一生懸命やってくれたし、終わって見れば何も不満はなかった。
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撮影終了後、ウィラポンがつくってくれた食事をとる。すべてが美味しい。途中で食べた食堂の何十倍も旨い。リング上で派手なパフォーマンスをすることもなく、相手を卑しく挑発したりもしないウィラポンは、誠実で、謙虚な人だった。飾らず、傲らず、必要なことを必要なだけ喋る人。人生で一番大事なものは、家族だと言い切っていた。
夕方、また350キロの道を走って、バンコクへと戻る。運転手さんがいるから疲れるわけではないけれど、結構な移動距離である。舗装路ではあるが、ときどきとんでもない段差があって、クルマがジャンプする。10時頃ホテルにいったん戻ってシャワーを浴び、初日に行ったタイ料理屋で遅い夕食をとり、深夜の街を散歩する。
ウィラポンのリポートは、29日発売の「Number PLUS」で。
×月×日
夕方日本代表対ウクライナ戦。6−3で敗れる。会場をあとにし、バンコク発22:35に搭乗。綾瀬はるか主演の映画を見る。いったい誰向けの映画?行きとは機材が異なり、機内ではこれ1本しか見られず、途中でバカらしくなってイヤフォンを外した。
×月×日
早朝、成田に到着。驚くほど寒い。リムジンバスから見る出勤途中の人々は、皆マフラー姿である。
帰宅後、仮眠をとる。夜、新宿御苑へと移った新生「達広」へ。すべてが美味しく、感動する。クエ、クロムツ、金目など。これだ、これだ、これだ、とうち震える。この凜とした空間、冷たいお酒、職人たちの無駄のない動き。日本の洗練された美と味がバンコク帰りの身にはとりわけ染み入る。
×月×日
いま一番売れている男優を抱える芸能事務所の社長にインタビュー。いろいろと裏話が聞けておもしろかった。この男優もまた職人。不器用で一直線。結局、私はそういう人が好きなのだ(取材対象として)、ということを痛感する。
×月×日
5月に「家の履歴書」でお話をうかがった三宅久之さんが亡くなる。お邪魔したとき、ご自身の歩みをわざわざ一枚の紙に書き出してお待ちいただいていたのが印象的だった。2時間余りだったけれど、もっともっと聞いていたいと思った。密度濃い戦中戦後史。これが最後のインタビューとおっしゃっていたけれど、もしかしたら、本当にそうだったのかもしれない。
×月×日
葉山のレストラン「ル・カナリ」で葉山在住の2家族、スシケンを中心とした食事会。フルコースに合わせたワイン多種。美味。
×月×日
J2入れ替え戦。その後、みんなで原宿の居酒屋へ。本当は、代々木公園の「クリスチァノ」に行きたかったのだけれど、いっぱいで入れず。
×月×日
六本木にて森英恵さんにインタビュー。森さんへのインタビューは2度目。年齢を聞くとたまげる。とても、そんなお年とは信じられない。この世代の人は本当に凜とされている方が多い。
×月×日
恵比寿で来年出す単行本の打ち合わせ。「おやまだ」、「bettei」、「くおん」、「並木橋なかむら」に電話を入れるもいっぱい。人気店は週末でなくてもいっぱいなのか。結局、飛び込みで、漁船を模した店に入る。落ち着かない。その後、新橋でTV局の友人らと合流。15年ぶりぐらいにお会いした編集者に自宅まで送ってもらう。「何年ぶり」というときの単位がだんだんでっかくなっている気がする。
×月×日
40枚ほどの原稿を書くことになっていて、担当者と打ち合わせを兼ねた食事。最近お気に入りの荒木町「タキギヤ」で待ち合わせ。日本酒の種類が豊富で、料理にも一品一品きちんとした輪郭がある。とりわけ、〆鯖はかなりのレベルであり、いつも頼む。コハダもよかった。光り物が旨い店はいい。小さな店で、設えはトイレを始め「居抜き感」は否めぬが、安くて総じて居心地がいい。私の中では、最近の一番のヒットである。その後、はしごをして飲み過ぎ、自滅。
×月×日
友人のスタイリストから農業本の1位になっていたと短いメール。調べてみたら、以下のようなことだった。嬉しい。

秋も深まり、秋の味覚に食欲をそそられるこの頃。外食もいいけれど、お家でもより美味しいものを、より安全なものをと、食材選びに気をつけている人は多いのではないでしょうか。食品売り場には作った人の顔が見える農作物が並び、畑をシェアして自分たちで作ることの楽しさを共有する人たちも珍しくはなく、食に対する考え方も多様化しているよう。そこで今回は、「山形ガールズ農場」の代表として活躍中の菜穂子さんに“農業の喜び、楽しさを知る本”を紹介してもらった。
【1位】『庄内パラディーゾアル・ケッチァーノと美味なる男たち』一志治夫 文藝春秋 1800円
全国から食通が集うレストラン、アル・ケッチァーノのシェフ・奥田政行の食への情熱や、彼を支える人々の様子が描かれるノンフィクション。地産地消、地方再生などもテーマに。
【2位】『初女さんのお料理』 佐藤初女 主婦の友社 1890円
「“食”はいのち」と語る福祉活動家・佐藤初女による料理本。全46品のレシピが紹介されると同時に、初女さんによる食をテーマにした温かみのあるエッセイも収載されている。
【3位】『限界集落株式会社』 黒野伸一 小学館 1680円
過疎や高齢化などにより先行きが不安な故郷で、主人公が農業経営に着手。社会問題や抵抗勢力と格闘しながら、故郷の再生を目指していく地域活性エンターテインメント小説。
【4位】『やさい畑』(2012年秋号) 家の光協会 880円(隔月刊)
【5位】『伝承農法に学ぶ野菜づくり こんなに使えるコンパニオンプランツ』 木嶋利男 家の光協会 1365円
【6位】『おじいちゃんのカブづくり』 つちだよしはる そうえん社 1260円
【7位】『内田 悟のやさい塾 旬野菜の調理技のすべて 保存版 秋冬』 内田 悟 メディアファクトリー 1995円
【8位】『百姓貴族』(1〜2巻) 荒川 弘 新書館ウィングスC 各714円
【9位】『超人気レストラン『農家の台所』の野菜がおいしい低カロリーレシピ』 農家の台所 マガジンハウス 1300円
【10位】『山形ガールズ農場! 女子から始める農業改革』 菜穂子 角川書店 1500円
取材・文(ランキング部分)=澤井 一
(ダ・ヴィンチ12月号 「その道のプロに聞く! ダ・ヴィンチなんでもランキング」より)
2012-11-25 18:21 この記事だけ表示