中標津で小説家と[campionamento]
 北海道中標津に向かう。1日1便のためインタビュー前日に入り、しばし大平原を編集の方々と回る。気候も植生もどこか日本っぽくない。切り取り方によっては、ヨーロッパ的風景でもある。ぽつんぽつんと牧場が点在する。空気は乾いている。どこまでも伸びる一本道。フィンランドに行ったときの感じにも似ている。あれも行ったのは夏だったからな。長い冬を想像しないようにすれば、長逗留してみたい、とも思う。中標津の中心街は、荒んでいるというのではなくどこか乾いた雰囲気の街だった。この素晴らしき広大な風景を抱えるチェントロは、グランドデザインさえちゃんとなされれば、本当に理想郷となりうる場所だとも感じた。
 そして翌日、佐々木譲氏のインタビュー。佐々木さんは、この地に居を構える直木賞作家だ。長編の執筆時などにこの中標津に籠もることが多いらしい。佐々木譲さんのお名前は、もちろん、ずっと前から知っていて、デビュー作も発表された当時に拝読していた。が、それ以降はよい読者ではなかった。今回取材することになって、慌てて『警官の血』、『エトロフ発緊急電』、直木賞受賞作『廃墟に乞う』、そしてデビュー作『鉄騎兵、跳んだ』の再読、さらにはエッセイや記事に目を通しと一応の準備をして臨んだが、やはり、あと数作読んでおけば話は深まったのに、と正直思った。2400枚の大作『武揚伝』は無理だったにしても。それにしても、どの作品も文句なく深く面白く、久々に片っ端から読み落としてみようという気にさせられた。温厚かつ誠実なお人柄に助けられて、それでもインタビューはつつがなく終了。何よりも、資料集め、取材、執筆のそれぞれでいかに集中し打ち込むかという姿勢が私には刺激になった。これは本当に、久々の学びだった。ダレていた自分に一喝入れられた感じだ。ちゃんと誠実に向かわなければ、と痛感した。そして、向かう価値のある作品を立ち上げ、取り組まなければ、と自省した。一端ホテルに戻り、再び編集者の花房麗子、小林龍之の両氏、写真家のホンマタカシさん、佐々木譲さんらと地元の居酒屋「一番星」に集合し、飲む。一切偉ぶらず、媚びず、終始笑顔で語る佐々木さんが文句なく格好よかった。ホテルに戻り、こんな熱い湯は初めてだっていうぐらいの温泉に浸かり、サウナに入り酔いを飛ばす。そして、ひとりカメルーン戦を見る。客観的に見れば、カメルーン、いったいどうしちゃったの、というゲームだったのではないか。でも、よく頑張りました、日本代表。そういえば、この日私が佐々木譲さんの取材をすることは、すでに別のルートから伝わっていた。すがやみつるさん、鋭すぎです。よくわかりましたね、かくも少ない情報(↓6月7日付ブログ)で。またいつの日かお会いできますよう。

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      手入れの行き届いた佐々木邸の裏庭。周りは牧草地帯だ。
      奥に見えるのはいまは主なき馬小屋。
2010-06-15 00:00 この記事だけ表示